僕のおばあちゃんの話をする。
僕のおばあちゃんは,僕が1歳の時,死んだ。
だから,どんな顔をしていたのか,どんな声をしていたのか,わからない。
でも,僕の心の中にはおばあちゃんがいる。
今でも,いつでも。
僕が,生まれてすぐ,おばあちゃんは入院した。
ガンだったようだ。
おじいちゃんや,おじさん達は,いろんな人に頭を下げておばあちゃんの治療費を工面した。
ボーナスはすぐベッド代に消えたらしい。
それでもガンはどんどん転移した。
舌にまで転移した。
「それでも生きたい」
おばあちゃんは言った。
大好きなワインの味がわからなくても,
話すことができなくなっても,
舌を失っても生きることを選んだ。
舌を失い,管だらけになっても,
おばあちゃんは懸命に生き続けた。
僕が1歳になってまもなく,
おばあちゃんは死んだ。
集中治療室に入ったおばあちゃんが,
病院を抜け出したことがあったらしい。
初孫である僕に会うためだ。
母やおじさん達は驚き,病院に帰るよう騒いだが,
おばあちゃんは僕を抱いてほほえんだそうだ。
おばあちゃん
僕はどうしたらいいですか。
悲しいことが多すぎるよ。